Satoshi's Data Labo            
Bad Debt Provisioner : Flow Rate Method による Bad Debt Provision の自動計算

ERP Package等のハイエンドな会計システムでは、売掛金のAging Analysis のテンプレートが準備されていることが多い。 Aging Analysis を活用した滞留債権のモニタリング・督促は有用だが、会社決算を考えた場合、Aging Analysis のみでは必ずしも貸倒引当金算定の為に十分な考察を与えていないと考える。 本稿では会計システムから抽出可能な売掛金データのみに依拠し、一定の合理性を持つ貸倒引当金の算定を目指すものである。


プロローグ

もう随分前の話になるが、ある海外子会社の監査支援を行ったことがある。 この会社はリテールファイナンスの会社であり、10万超の顧客に対して債権を抱えていたが、経済環境の急速な悪化を背景に滞留債権が急増しており、貸倒引当金の計上不足が懸念されていた。 監査法人は引当積み増しを拒む経営陣に対し不適正意見表明を突き付け、親会社にとっても監査上のリスクがあったため、私が仲裁に入ることとなった。

当該子会社は滞留債権の増加を把握するも、それに対応した引当水準の見直しを十分に検討せぬまま引当水準の維持を監査法人に対して主張していたため、私は会計システムから事業開始以降の回収データを抽出のうえ、適正な引当水準を算定することとなった。 同社は顧客管理・経理業務に独自のシステムを使用していたため、私は分析用の基礎データを入手する都度システム管理者の協力を仰ぐ必要があり、分析に着手する前段階で苦戦を強いられた。

この件で得た教訓は、各社のビジネスモデルや環境に応じて引当金の算定方針、入手可能な情報(クレジット情報等)、或いはシステムから抽出可能な情報は異なるため、その妥当性を評価する側にしてもある種のテンプレートを持っていなければ、こうした状況に効率的に対処することは難しいということだった。

その様に考えた際、後述するFlow Rate Method は一般的な会計システムを使用している会社であれば保持しているであろう、売掛金関連情報のみに依拠してある程度精緻な引当金算出ができるため、この手法をベースにテンプレートを準備しておくことは有用であると考える。 また、M&Aにおける財務DDにおいてもこうしたツールは使い道があると思う。


Flow Rate Method

Flow Rate Method は、売掛金のAging Analysisから得られるInsight を引当金算出に活用するものであり、売掛金の滞留日数に応じ、長期滞留債権にはより高い引当率を算定することとなり感覚的にも納得感が高いと思う。 大雑把に言えば、毎月作成する売掛金のAging List を並べ、これを分析することによって滞留期間の長期化に伴うデフォルトリスクの増大を把握することとなる。 具体的な説明はエクセルに設例を示したので、そちらを参照願います。

要点に絞ると、ある連続した2月分のAging List を比較し、X1月に1月滞留だったもののうち、どれだけの割合が X2月に2月滞留に陥ったかを計算する。 これは各Aging Category に属する債権群の劣化率(Deterioration Rate) を把握するということだが、一般的に短期間の滞留はその後速やかに回収され正常化することが多いが、逆に既に長期間滞留している場合、その後正常化する可能性は低い傾向が浮かびあがる。 こうしたAging Category 毎の劣化傾向を一定期間継続的に把握することによって、平均的なデフォルト発生率 (Probability of Default) を算定するものである。


尚、Flow Rate Method によってデフォルト発生率は算定できるが、実務ではこれに加えデフォルト発生時の損失率 (Loss Given Default) を加味したうえで、見込損失額を算定する必要がある。これはデフォルト状態に陥った場合でも、担保の執行等によって一定額の回収が図れる点を考慮すると、全てが全損となるものではない点を考慮するものです。

ダウンロードはこちらから ➡ BD.xlsx

参考資料:IFRS 9 –Credit Modelling and Implementation (PwC)



DBシステム : bd-Provisioner

エクセルの設例を見ればお判り頂けるように、Aging List の準備が分析の出発点となるが、会計システムの仕様の違いやユーザのコンフィギュレーションによってAging List も一律ではないため、各社の既存Aging List を活用する前提で汎用的なシステム構築を行うのは困難である。このため、本システムでは会計システムから基礎データとして、Invoice単位で売掛金明細(含む、回収日情報)を抽出することにより、毎月のAging List を作成のうえ、Flow Rate Method に基づく分析まで一気通貫で自動化するシステム開発を目指しました。

尚、Flow Rate Method の分析対象期間の設定については、各社のビジネスモデル・環境に応じ継続的な適用が必要である。
(例えば、決算期末直前 一年間のAgingデータ分析に基づいて引当率を決定するといった引当方針を継続適用する等)


How to Use

エクセルの説明資料のプロセスを自動化したのみなので詳細説明は割愛しますが、会計システムから売掛金情報を抽出し、それをアップロード用のエクセルを使ってシステム内にインポートして下さい。 その後、分析対象期間を適宜設定して下さい。 
後は、システムが自動分析した結果を各種レポートとして自動出力してくれます。

アップロード用テンプレートはこちらから ➡ AR.xlsx


メインメニュー

/bd01.png


ARデータインポートメニュー


/bd02.png
 
 
Copyright © 2017 Satoshi Ashikari All Rights Reserved.